【書籍】起業の科学 スタートアップサイエンス

起業家の一番大きな課題を解決するために

筆者は、日本で4回、シリコンバレーで1回のスタートアップ立ち上げや投資家としての経験を持ち合わせ、本書に5年間、約2500時間を費やし、1000人以上の起業家、投資家、スタートアップ関係者と対話をし、この本を書き上げている。
スタートアップは始めた瞬間から、課題が次々と降りかかってくる。その中でも、一番大きな課題は、スタートアップが成長していく過程の様々なタイミングで、自分たちが何を実現すればよいのかを判断する基準がないことだ。アイデアを十分に磨き込んでいないのにプロダクト開発に注力したり、プロダクトがカスタマーの心を捉えるものになっていないのに成長に向けて投資をしたりといった間違いを起こし、成功する前に資金が尽きて倒れてしまう。
本書では、カスタマーに熱烈に愛されるプロダクトを生み出し、成長できるようになるまでの考え方を「アイデア検証」から「スケール(事業拡大)」までの20ステップとして定義している。各ステップでどのようなアクションをすべきかを詳細に紹介しており、このステップに沿うことで、自分たちのスタートアップが適切な方向に進んでいるか、時期に合った拡大ができているかをチェックできる。この本で示した基本的な型を身につければ「失敗しないスタートアップ」は高い確率で実現できる。

解決する課題の質を高めよ

世の中にはたくさんのビジネスアイデアがあるが、目指すべきは課題の質とそのソリューションの質がいずれも高いアイデアである。そのバリューのあるアイデアを見つけるためには「課題の質を上げてから、ソリューションの質を上げる」という道筋が必要で、先にソリューションの質を高めてから、解決する課題の質を高めるというパスは存在しない。これは自分たちの技術力に自信があるが、課題を十分に検証していないという典型的なパターンの勘違いであり、「良いソリューション」をそのまま「良いアイデア」だと思ってしまっている。「今検討しているアイデアは、顧客にとって本当に痛みのある課題なのか?」「このアイデアの妥当な代替え策が、既に市場に存在していないか?」様々な角度からアイデアの深掘りを繰り返していくことで、課題の質が上がり、解決策に磨きをかけていくことで、初めて価値のある「良いアイデア」に至るのだ。

ペブルテクノロジーの失敗例

スマートウォッチのスタートアップであるペブルテクノロジーは初製品のクラウドファンディングで約11億円も集めたが、課題の検討が不十分だったために結局身売りすることになった。ガジェット系のクラウドファンディングに集まる人たちは、自分自身が抱える「痛みのある課題」を解決するためにガジェットを購入するのではなく、多くの人が「なんとなく面白そう」という期待で支援する。初回のプロダクトを出荷できたが、「興味本位のカスタマー」向けのプロダクトでしかなく、スケールしようとしても広いユーザーを獲得するには至らなかった。

クレイジーなアイデアで世界を変えたAirbnb

宿泊予約Airbnbのブライアン・チェスキーCEOは、自社のサービスについて「多くの人が、Airbnbはうまくいった最悪のビジネスアイデアだといっている」と述べている。犯罪大国アメリカでは赤の他人の家に泊まる、他人を自宅に泊めるという行為は、まさにバッド・アイデアそのものだったからだ。当初は、自分のアイデアを人に話すときに恥ずかしい思いをしたらしい。周りからは「やめておけ」と散々言われた。
クレイジーなアイデアは、他人が目をかけないようなポイントに注目してアイデアを掘り下げ、まだ誰も言語化できていない秘密を見つけることで生み出されている。

小市場から攻略したフェイスブック

フェイスブックは2004年の創業当時、既に「Myspace」や「Friendster」といった競合サービスが存在していたので、いきなり大きな市場で勝負することは避けた。ハーバード大学での成功後、アイビーリーグに絞り、しかも1校ずつ展開していった(既に学生向けのSNSが存在している学校から狙い、自分たちの強みや弱みをあぶり出しながら進んでいった)。しかも、各校において全学生の75%がユーザー登録するまで次の学校に行かないという非常に高い目標を掲げていた。当時を振り返って、マーク・ザッカーバーグ氏はこう言っている。「大学を増やしながら徐々に最適化した。機能を追加し、それを確かめて、うまくいったら、次の大学に攻め込むというプロセスを踏んだ」今でこそフェイスブックは1万くらいの機能があるそうだが、当初は8つの機能しかなかった。大事なのは、ユーザーがそのサービスを熱狂的に使うかどうか。そのポイントをザッカーバーグ氏は熟知していた。スタートアップは顕著化している大きな市場を狙うのではなく、他の誰も気づいていない潜在的な市場を狙い、圧倒的なシェアを取り、競争を排除することが、最も重要な戦略だ。

目次紹介

第1章 IDEA VERIFICATION(アイデアの検証)

  スタートアップにとっての「良いアイデア」とは

  • いかに課題にフォーカスするか
  • 誰が聞いても良いアイデアは避ける
  • 他の人が知らない秘密を知っているか?
  • なぜクレージーなアイデアが求められるのか?
  • スタートアップが避けるべき7つのアイデア

  スタートアップのメタ原則を知る

  • スタートアップとスモールビジネスの違い
  • 97%のことにNOと言えるか
  • スタートアップは極端に直感に反する

  アイデアの蓋然性を検証する

  • スタートアップはタイミングが命
  • 市場環境の流れを読む
  • PEST分析で「兆し」を見つける
  • 破壊的イノベーションと持続的イノベーション
  • スタートアップの10のフレームワーク
  • ターゲットの市場に狙いを定める

  Plan A(最善の仮説)を作成する

  • リーンキャンバス
  • ピボットの重要性と留意点

  サイドプロジェクトでアイデアを練る

第2章 CUSTOMER PROBLEM FIT(課題の質を上げる)

  課題仮説を構築する

  • 課題の質を上げる
  • ペルソナを想定する
  • カスタマーの体験に寄り添う

  前提条件を洗い出す

  • ジャベリンボードの使い方

  課題〜前提の検証

  • Get out of the building!
  • プロブレムインタビューの心得
  • 仮説を修正していく

  創業メンバーは課題が腹落ちしているか(ファウンダー・プロブレムフィット)

第3章 PROBLEM SOLUTION FIT(ソリューションの検証)

  UXブループリントを作る

  • 最適化する前に入念な検証をする

  プロトタイプの構築

  • UX設計をベースにプロトタイプを実装する

  プロダクトインタビュー

  • カスタマーの声がリスクを減らす
  • Problem Solution Fit終了の条件

  共同創業するチームを作る

第4章 PRODUCT MARKET FIT(人が欲しがるものを作る)

  ユーザー実験の準備をする

  • リーン・スタートアップをより実践的にする
  • MVPの型を知る

  MVPを構築する

  • MVPからの学びを最大化する

  MVPをカスタマーに届ける

  • 恥ずかしい状態のうちに市場に出す
  • マーケティングより直接対話する

  MVPの評価を計測する

  • スプリントの繰り返しで評価を計測
  • 定量分析で定番の指標を使う
  • 定性分析のインタビューでインサイトを得る

  新たなスプリントを回す

  • PMF達成へ再びスプリントを実行
  • PMFは達成できたか?

  UXを磨き込む

  • UXがユーザーの愛着を左右する
  • ユーザーを定着させるUXの秘訣
  • 分かりやすさがユーザー定着の決め手

  ピボットを検討する

  • ピボットをするか 辛抱するか
  • 残り何回ピボットできるか?

  PMF達成へ柔軟性の高いチームを作る

第5章 TRANSITION TO SCALE(スケールするための変革)書籍

  ユニットエコノミクスを計測する

  • 顧客が増えれば利益も増える形に
  • LTV(生涯価値)を計測する

  顧客1人当たりのLTVを高める

  • 顧客を長く定着させるには秘密がある

  顧客獲得コスト(CPA)を下げる

  • PMF直後のCPAを把握する
  • オーガニックでCPA低減
  • 情報をストックして幅広い層にリーチ

投稿者:

Shuji Tenra

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